日本生殖看護学会

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設立の趣意

Purpose of establishment
2003年5月24日
日本不妊看護学会
設立発起人・代表
森 明子
Akiko Mori

1999年10月に発足した日本不妊看護ネットワーク(Japan Infertility Nursing Network)は不妊に悩む人々へのよりよい看護支援を行うために、会報、講演会(年1回)の開催を通じ、不妊治療やその看護に関心を寄せる看護職が地域や所属を越えてつながり、生殖不妊医療領域の看護情報を共有してまいりました。また、これらの活動を通じ、看護・助産の職能領域のみならず、生殖医療にたずさわる他の職種、社会一般の人々に対しても、不妊看護の分野に対する認識・関心を広める役割を果たしてまいりました。

生殖不妊医療をとりまく状況は今後大きな転換を迎えようとしています。凍結保存された未受精卵を用いた体外受精児の出生など新技術の開拓や受精卵のからむES細胞の研究、クローン技術など生命をめぐる技術の論議は留まってはおりません。厚生労働省は「健やか親子21」に“不妊への支援”を盛り込みました。2005年を目標に全都道府県に不妊専門相談センターの設置、2010年を目標に不妊治療を受ける際に、患者が専門家によるカウンセリングが受けられる割合を100%にする計画が進められております。一方、厚生労働省の生殖補助医療技術に関する専門委員会では提供配偶子・胚による生殖補助医療の実施・管理に必要な体制が審議され、「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」がまとめられました。

生殖不妊医療における新たな局面に求められる看護職の役割について見通す必要も生じてきております。2002年10月、日本看護協会神戸研修センターは、「不妊看護認定看護師教育課程」を開講しました。2003年には不妊看護認定看護師が誕生し、その活躍が期待されます。また、2002年11月には、さまざまな職種が協力して最適な生殖医療が提供できるような研究と環境整備を目指し、日本不妊カウンセリング学会が設立されました。まさにここに来て、看護職がその専門性を発揮し、職種間の協力をもって行う不妊ケアの方向性をみることができるようになりました。

従来から、不妊治療や生殖補助技術を提供する専門医療機関においては看護職が体外受精コーディネーターや不妊カウンセラーとして機能し、治療を受ける患者カップルにとって拠り所となるようなサポートを提供してまいりました。このような看護者をマンパワーの面でも実力の面でも今後、今まで以上に充足し、レベルアップしていかなければならないでしょう。

また、不妊ケアとして当事者が求めるニーズは、専門医療機関を訪れる以前から始まり、妊娠・出産を果たした後や生殖期を越した後の人生、新たな家族にまで及ぶものです。そして治療中であっても、医療機関で受けるケアだけでなく、施設を越えて提供されるケアを必要としています。このように看護職が提供できるケアはより広く医療に、社会に、存在しております。しかしながら、看護職全体の不妊の問題や不妊看護に対する認識は未だ十分とはいえず、こうしたニーズに対応するためのノウハウを看護者が発展させていない状況にあるといえるでしょう。そのためには、不妊の問題を社会的にとらえる視点をもち、生殖・不妊領域の看護における専門性を医療チームの一員として、より発揮できるための教育が必要です。不妊当事者に起こっている現象を看護の視点で解き明かし、看護者が不妊の患者に行うさまざまな技術およびことばを介したケアの効果を科学的手法を用いて明らかにし、それらの結果として科学的知識を蓄積することもまた必要です。

このような社会状況と看護の現状を踏まえ、今後さらに不妊看護に関する臨床・教育・研究の充実をはかることを目的として、同ネットワークを学術的に、専門性を培う場として発展させるために「日本不妊看護学会」の設立を提案いたします。