ご挨拶
日本生殖看護学会理事長(第6・7期)を拝命いたしました上澤です。
学会を代表してご挨拶させていただきます。
本学会は、生殖医療系学会が多々あるなかで唯一、生殖看護における臨床・教育・研究の充実を目的として2003年に設立しました。7月現在の会員数は337名ですが、会員の皆様のご支援のお陰で今年度20周年を迎えることができました。
生殖看護の範囲は、不妊治療時の看護にとどまらず、プレコンセプションケア(前思春期から生殖可能年齢のすべての人々の身体的、心理的、社会的な健康の保持増進)、がん治療等前の妊孕性温存時のケア、ART治療後妊娠・出産時のケア、更年期ケアを含む生殖に関連する幅広い看護実践を役割としております。
最近の社会的出来事では、2020年12月に生殖補助医療法(生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律)が成立し、第三者が介入する機会も多い生殖補助医療で出生した子の親は誰かを明確に定めたことは、子どもの福祉にとって大きな福音となりました。また、2022年4月から開始された生殖補助医療への医療保険適用により経済的負担が軽減され、若いカップルも受診しやすくなりました。
しかし、世界各国の生殖補助医療実施状況をモニタリングする組織「国際生殖補助医療監視委員会(International committee for Monitoring Assised ReproductiveTechnology:ICMART)の報告では、わが国のART実施件数は60カ国中、第1位にもかかわらず、出産率は最下位の6.2%というショッキングな結果が示されています。これより、看護職は多職種とも連携し、プレコンセプションケアの実施や不妊治療中や妊娠期の健康管理とカウンセリングを含む意思決定支援等の生殖看護の実践が今こそ望まれているとわかります。
本学会活動は、5つの委員会が担当し、ニュースレター発行、教育研修会や学術集会の開催、学会誌の発刊により会員の皆様を支援しております。また、今回、学会ホームページをリニューアルすることで、会員の皆様へはもちろん不妊を心配されている方々にも参考となる情報発信ができればと考えております。また、本学会は看護系学会等社会保険連合(看保連)と健やか親子21(第2次)の推進協議会メンバーとして、ワーキンググループ活動をしています。これらの活動も通して、生殖看護の役割や活動を広く市民に発信したいと考えています。
発展途上の本学会ですが、皆様には引き続きご指導を賜りますようお願い申し上げます。